11看護師が見た「S-1さんのエピソード」

Sさんの特徴

Sさん  60歳以上 いつもにこにこしている 

知的発達障害の児童の入所施設や、大人の入所施設にも入所することなく生活していたSさんは、ご両親や兄弟姉妹とにかわいがられて、育ったのだと感じます。

かわいいぬいぐるみや、はんかち等、身の回りの物が、明るい色でかわいいものが、多かったです。

毎日の着替えも、自分で(遅いですが)選ぶことが出来ました。

ある夜、寝る前の、パジャマに着替えるとき、何かが嫌で、「イヤー」と言って(駄々をこねるように)、ベッドの脇に、しゃがみこんでしまいました。

職員さんは、抱きおこし、立ってもらおうと思い、後ろから抱きかかえるようにしましたが、「イヤ,イヤ」といって、急に体を前にかがみ、強く嫌がったとき、上腕骨を 複雑骨折しました。(成人の上腕骨遠位複雑骨折参照)

痛みがひどく、大きな声で泣いていました。

上腕骨複雑骨折は、なかなかよくなりませんでした。何回も入院して、手術をしました。

手術をしてもなかなか良くならなかったのは、利き腕だった事が大きく影響しています。

Sさんは、入院中も何も問題をおこすことはありませんでしたが、利き腕が骨折したのですが、「利き腕が骨折したということ」の重大事項に、医療スタッフも、施設のスタッフは、退院してからの生活の事の、相談(一般的には退院指導がおこなわれる。)が十分でなかったのでしょう。

これは「再発防止プラン」を、(知的発達障害の人の為だけのものと、発達障害のない人の為とがあったほうがいいと考える)

その患者さんを取りまく人たちで、プラン作成、誰が見てもわかる様式にし、実行する。さらに実行したことに対する評価および反省を加えるとよいと、筆者は考えた。

もっと早く「再発防止プラン」の件に気づくけばよかった、もっと他の施設と共有できる方法を見出せばよかったと考えます。

筆者 看護師 桔梗

12看護師が見た「K-1君のエピソード」

K君の特徴

50歳以上 男性 言葉での表現ができる 早口で物事を伝えようとする

まっすぐに歩けるが、前傾姿勢になりやすい 

K君は、いつもあわてていました。作業は能力があり、こなせるのですが、ごみが落ちていると、気になり、どうしても拾ってしまわないと、気がすみません。

母親と外出する時も、自宅へ外泊する時も、施設で散歩する時も、施設の中でも、常に、ごみが落ちているのが、気になる、脅迫的でした。

そのごみを拾うのに、道路の車などの、危険を回避することなど、眼中になく突進してしまいます。

特に施設の生活では、危険を職員が知らせても、聞こえていても、夢中にごみに向かっていくのです。

仕方がないので、危険な行為(ごみを見て突進すること)をしないように、約束するのですが、なかなか、守ることができないため、

職員が強く叱ったり、走れないように、マンツーマンで対応します。

交通事故にはあっていませんが、運転手の人は、びっくりでしょう。

いきなり道路の真ん中のごみに突進しようとするのですから。

なんとか施設の職員さんも、個別の対応で、生活していてもらいましたが、ある問題がありました。

いつもあわてている、K君です。

食事の時も、早口で、話をしながら、口に食事が入っていても、ムセながら食べていました。

誤嚥性肺炎になってしまいました。

ある病院に受診した時には、極度の貧血と、栄養失調と診断され、多動の為、普段の食事ではまかないきれず、栄養補助食品を飲むことになりました。

しばらくは、栄養補助食品で全身状態は改善されましたが、飲まなくなるとすぐに悪くなりました。

何度も、誤嚥性の肺炎に苦しみ、重篤な状態になり、亡くなってしまいました。

K君はきっと、汚れていてはいけない!ごみを減らさなくてはと思っていたのでしょうか。

そんなに、急がなくても、ゆっくりとごみを拾って、ごみ箱に入れたりすればよかったのにと、もっとゆっくり人生やって行けたのにと、もっと支援者を多くしていれば、個人の特徴を捉えることができたはずと、筆者は想いかえします。

筆者 看護師 桔梗

13看護師が見た「Y-1さんのエピソード」

Yさんの特徴

Yさん 50歳以上  車いす利用の身体障害がある  言葉はよくわかるし話すことができる 生まれつき片目である しかも知的障害者です

Yさんはいつも明るい。 在宅から、まだ歩ける頃、脊椎の病気で首の手術をしたそうです。

入院中にいろいろ問題があったそうです。

痛みの訴えがあいまいであったり、

リハビリで歩行訓練がうまくできなくて、

本人さんは、病院が大嫌いになっていました。

家族の都合でグループホームに入所しました。

スタッフ一同と仲良くできていましたが、

なかなかうまく歩けないし、医療機関に受診するにも、

グループホームでは、限界があり、家族も子育て中で、家族の手で受診も困難でした。

家族の希望で、入所施設での生活が始まりました。

いろいろな事に興味があるYさんは、職員さんと仲良くもあり、けんかになることもありました。

職員さんは、若い、外にも自由にいける、買い物や、いろいろ事を話してくれるので、

グループホームでのスタッフさんと、仲良くしていたのと、変わりありませんでした。

が、しかし、歩けなくなり、活動も一緒に出来ないこともあり、留守番でいるのが、とてもつらかったでしょう。

よくヒステリックになったり、他の利用者さんや職員さんに、意地悪を言ってみたりしていました。

もっと、いっぱい外に出たいのに、病院に受診するのではなく、もっと皆ともっと遊びたいのにと、思っているのでしょう。

筆者 看護師 桔梗

14看護師が見た「a-1さんのエピソード」

Aさんの特徴

Aさん        50歳以上  かたことの言葉は言える 身体的特徴はスマートには歩けない

甘えん坊です。

いつも「お母ちゃん」といっしょがいいです。

かあちゃんと作業所に行くのは嫌だけど、長い期間作業所を利用していました。「お母ちゃん」も高齢になり、通所利用から、入所の施設を探していました。

入所の施設では、もっと重い知的障害者の利用者もいて、なかなか甘えん坊のAさんのことが、あと回しになってしまいます。

そうすると、Aさんは「お母ちゃんに言うよ!」といって、涙は見せませんが、泣いていました。

甘えん坊のAさんは、動きがゆっくりです。

ほかの利用者さんに、突き飛ばされたり噛まれたりと、被害を未然に察知することが出来ず、いつも被害者でした。

がしかし、とうとうAさんも反撃しました。

人をつねっていました。自分より弱いほかの利用者さんにです。

でも、つねると、職員さんがAさんの方を向いて、Aさんに向き合って叱ってくれるのです。

だれでも、叱られるよりほめられたいです。

でも、Aさんつねるのをやめません。叱られるときは、職員さんはAさんに向き合ってくれます。

Aさんつねっちゃだめよー」と職員さんを独り占めできました。

「ストレスたまっちゃうよねー」いって、通販カタログで、かわいい靴下を見せてくれたり、かわいいTシャツの柄を見せてくれたりしました。

絵本を見ているより、Aさんは嬉しそうに、満面の笑顔で

ごめんチャイ」と、つねったことを謝ることが出来ました。

もっと支援を豊かなものにしたいものです。

もっと職員数を増やし、個別支援計画通りのことが、実施されるといいです。

そうすればAさんの、つねるという行為は激減するでしょう。

Aさんの気持ちは、

もっとこっち向いて、わたしのことに関心向けてということでしょう。

筆者 看護師 桔梗

15看護師が見た「U-1さんのエピソード」

Uさんの特徴

狭頭症の手術を幼いころに受けていました。

狭頭症

頭蓋縫合早期癒合症(とうがいほうごうそうきゆごうしょう)、頭蓋骨癒合症(とうがいこつゆごうしょう)、頭蓋骨早期癒合症(とうがいこつそうきゆごうしょう)とは、頭蓋骨縫合が早期に癒合した結果生じる頭蓋の変形と、それにともなうさまざまな臨床症状を合わせたものの総称といわれています。

向き癖などにより乳幼児の頭蓋が変形してしまう位置的頭蓋変形症とは別ものです。

Uさんはご両親はもう亡くなり、姉妹のところへも、行くことはできないくらいの、重度の知的障害者です。

姉妹の人は、よく施設にきてUさんの近況を気にかけていました。

Uさんは、よく施設の外に飛び出します。本当は勝手に飛び出すと、危険です。

がしかし、脱兎のごとく、飛び出すのは、誰かが開けてくれた扉のそばにいて、そのすきを狙って、飛び出すのです。

いつもニコニコして、「アレー?」と言って走り出します。

施設の職員さんや、その時来ていた他の利用者さんの保護者さん、その場に居合わせた、外部の業者さんなど、みな驚き、Uさんを止めようとします。

常に、鍛え上げた脚力で、Uさんは転びません。

ニコニコして走ります。

そのあとを、職員や、手の空いている人で、追いかけます。

早い早い!

追いかけごっこです。

追いかけた人が、Uさんの腕をつかみ、走るのを止めます。

が、Uさんは「せっかく出たし、かけっこ楽しいし、戻るもんか」としゃがみこみます。

Uさんは女性です。背も小さいです。が、しゃがみこむと二人がかりか、男子の職員さんの力を借ります。

施設の中にやっと戻っても、Uさんは呼吸も乱れることなく、また脱兎の如く走るチャンスを狙っています。

行方不明

定期的な点呼や、食事の時間、お茶の時間、おやつの時間、などでUさんがいないことが、ありました。

当然、手のあいてる職員や協力者で探します。地域の人に声をかけてまわり、とうとう派出所にもいきました。

いなくなって何時間も経ちました。

近所のマンションの人から知らせがあり、迎えに行くと、マンションの3階の踊り場で、発見されました。

元気にニコニコしていました。

無事でよかったです。

Uさんの気持ちは、もっと外を走り回りたいよー、遊びたいよー

筆者 看護師 桔梗

16看護師が見た「K-2 君のエピソード」

Kさんの特徴

Kさん 40歳代の男性 背は低い  他の利用者さんを噛むことがあった 

狭頭症の手術を幼いころに受けていました。

狭頭症頭蓋縫合早期癒合症、頭蓋骨癒合症、頭蓋骨早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症(とうがいこつほうごうそうきゆごうしょう)とは、頭蓋骨縫合が早期に癒合した結果生じる頭蓋の変形と、それにともなうさまざまな臨床症状を合わせたものの総称で、「狭頭症(きょうとうしょう)」ともいいます。

K君はクルクル回るのが好きです。

なぜかは解りませんが、いちいち回ります。散歩や歩行に行っても、歩きながら回ります。

転んだりはしません。

いつも家への外出や、外泊の時は、いつもお母ちゃんと一緒です。お母ちゃんと手をつないで、帰って行ったり、外出したりします。

コンビニの外で、何か買ってもらったのでしょう。コンビニの外でお母ちゃんと食べているのを、よく見かけます。

姉か妹さんがいましたが、お母ちゃんに協力していました。

入所の施設に入ったのは、児童の入所の施設が、年齢超過の為に出なければなりませんでした。

家族は、家で毎日K君を見守ることが出来ないので、大人の入所の施設を探していました。

ちょうどこの施設が新設で入所募集をしていましたので、入所することが出来ました。

児童の知的障害の入所施設では、いずれ施設を出なければいけません。運動能力の高い知的障害の人は、小さい子供の頃は、家族で何とか見守れますが、夜も眠れないことがある、知的障害の人の世話においては、本人さんの成長とともに、見守りの困難が増します。

障害者同士で助け合えることもあるでしょうが、助け合うこともできない知的障害の人もいます。

児童の施設の年齢超過はいずれ来ます。

がしかし、次に大人の施設が、空きがあるとは限りません。

子どもの重度の知的障害者は、いずれ大人の施設が必要なことは、国も自治体も理解してくれていると思っています。

大きな施設を公立では困難でしょうか。

民間も、大きな施設を建てるのに、資金が必要ですし、その施設で働く人材を確保して、運営していくのにも、莫大な資金が必要でしょう。

施設も借金をして建てても、運営が黒字になることも、念頭に考えてはいてくれているはずですが、どうでしょうか?

今は、本人さんの契約で、本人さんが利用料を支払っています。(障害基礎年金でしか収入がありません。)

K君は、そんな中で毎日入所の施設でせいかつしていました。

あるエピソードがありました。

他の利用者さんの耳が噛み千切られていました。みんなが外に行く準備をしていて、職員さんの見守りが、薄くなっているその瞬間でした。

その場にいたK君ともう一人の利用者さんが疑われてしまいました。

そのエピソードより以前から、K君ともう一人の利用者さんは、よく、他の仲間の利用者さんに、噛んだりする他害が目立っていました。

特に耳を噛み千切られていた利用者さんは、いつもじっとしていられず、後回しにされると、暴力的になる利用者さんでした。

K君は今でも、噛む他害をする訳ではなく、あのエピソード以来、個別に支援するようになりました。

噛んでしまうあの頃のK君は、仲間の利用者さんが、騒音のようにやかましかったのだと、筆者は感じます。

それから、狭くて余裕のないプレイルームに、たくさんの仲間の利用者さんと、入れられて、「僕は静かなところがいいよー、奇声や暴言を吐く、騒音の、やかましい所はイヤだよ」とK君は言いたいのでしょう。

筆者 看護師  桔梗

17看護師が見た「誰でもに噛みつくK-3君のエピソード」

k君の特徴

k君  50歳くらい  腕の手首のあたりに噛みだこがある  両腕と両足に自傷した傷跡がケロイドに残っている

k君は、少しだけ、単語を話すことが出来る。

しかし、話をするというか、男性であるがモジモジしてしまう。

しかも次の行動に、サッと動けづ、やはりモジモジしてしまう。

k君はのんびり屋なのでしょう。

ゆっくりと、お母さんについて回り、

周りにめいわくもかけずに生活できたと、

筆者は感じていました。

しかし、親が高齢になり、

通いの施設では今後見守りが出来ないため、

入所の施設に入ることになりました。

通いの施設では、

夕方になると家族が迎えに来てくれて、

家で夕飯も食べれたし、

好きな一人遊びも、寝るまでできるし

(もちろん、お母さんと一緒にテレビも見たでしょう)、

あとは(明日も通いの施設に

行かなければいけないだろうなあって

おもいながら)ゆっくり眠れたでしょう。

しかし、入所の施設では、ノンビリできません。

他にも利用者さんは多いし、

男の職員さんも女の職員さんもたくさんいるし、

テレビを見るプレイルームは狭い、

うるさい、他の利用者さんは奇声を上げる、

泣く、けんかをするなどなど・・・

k君でなくても、イライラしますよ。

ついイーとなって、

自分の手首に自分で噛んでしまいます。

身体を爪でかきむしり、

傷を作ってしまいます。(自傷

なんだか、悲劇です。

もっと、集団で利用者さんを見守るのではなく、

ゆとりをもてる配慮が必要です。

収容所ですよね。

障害を持たない、

親がいない、もしくは親に事情がある子どもたちも、

児童養護施設で、収容されていますかね?

k君は他の利用者さんを、

噛むようになりました。

ほんとうは、絶対人を傷つけてはいけません。

しかし、誰にでも噛みついていくように見えました。

職員さんは、悪いことをすれば、叱ります。

もちろんk君も、頻繁に叱られるようになりました。

k君の気持ちは、もっとゆっくり、

テレビを見たり音楽を聞いたりしたいのに、

プレイルームでは出来ません。

他のやんちゃな利用者さんが、

奇声をあげてウルサイとなるとk君は噛みつきます。

k君に意地悪する利用者さんに噛みつきます。

誰にでも噛んでいるように見えますが、

そうではないようです。

k君は、言葉では注意できなかったので、

噛みついて警笛を鳴らしていたのです。

「こんな狭いところに、みんなと一緒に入れこまないでよ!」

と言っているようです。

きっとそうです。

必要な空間の広さの規定はある筈ですよね。

既定の最低のところで、広さを決めていませんか?

このプレイルームでは、何人しか

同時には入れてはいけない基準でもあればいいのにね。

今はk君は、プレイルームの外の廊下に

机と椅子がおかれ、そこにいることになっています。

テレビは見えない、

冬は寒い、夏は暑い廊下です。

筆者 看護師 桔梗

memo// ♪ 17