15看護師が見た「U-1さんのエピソード」
Uさんの特徴
狭頭症の手術を幼いころに受けていました。
狭頭症
頭蓋縫合早期癒合症(とうがいほうごうそうきゆごうしょう)、頭蓋骨癒合症(とうがいこつゆごうしょう)、頭蓋骨早期癒合症(とうがいこつそうきゆごうしょう)とは、頭蓋骨縫合が早期に癒合した結果生じる頭蓋の変形と、それにともなうさまざまな臨床症状を合わせたものの総称といわれています。
向き癖などにより乳幼児の頭蓋が変形してしまう位置的頭蓋変形症とは別ものです。
Uさんはご両親はもう亡くなり、姉妹のところへも、行くことはできないくらいの、重度の知的障害者です。
姉妹の人は、よく施設にきてUさんの近況を気にかけていました。
Uさんは、よく施設の外に飛び出します。本当は勝手に飛び出すと、危険です。
がしかし、脱兎のごとく、飛び出すのは、誰かが開けてくれた扉のそばにいて、そのすきを狙って、飛び出すのです。
いつもニコニコして、「アレー?」と言って走り出します。
施設の職員さんや、その時来ていた他の利用者さんの保護者さん、その場に居合わせた、外部の業者さんなど、みな驚き、Uさんを止めようとします。
常に、鍛え上げた脚力で、Uさんは転びません。
ニコニコして走ります。
そのあとを、職員や、手の空いている人で、追いかけます。
早い早い!
追いかけごっこです。
追いかけた人が、Uさんの腕をつかみ、走るのを止めます。
が、Uさんは「せっかく出たし、かけっこ楽しいし、戻るもんか」としゃがみこみます。
Uさんは女性です。背も小さいです。が、しゃがみこむと二人がかりか、男子の職員さんの力を借ります。
施設の中にやっと戻っても、Uさんは呼吸も乱れることなく、また脱兎の如く走るチャンスを狙っています。
行方不明
定期的な点呼や、食事の時間、お茶の時間、おやつの時間、などでUさんがいないことが、ありました。
当然、手のあいてる職員や協力者で探します。地域の人に声をかけてまわり、とうとう派出所にもいきました。
いなくなって何時間も経ちました。
近所のマンションの人から知らせがあり、迎えに行くと、マンションの3階の踊り場で、発見されました。
元気にニコニコしていました。
無事でよかったです。
Uさんの気持ちは、もっと外を走り回りたいよー、遊びたいよー
筆者 看護師 桔梗