21看護師が見た「s-k君のエピソード」
s-k君の特徴
側彎がある。歩行にやや困難がある。 言葉を理解する能力がある。
両手両足に変形した奇形がある。
s-k君のエピソード
s-k君は、歩くのが遅かったりしましたが、
なんでも一生懸命にやっていました。
側彎と、両手両足の奇形がありましたが、
一人で食事も出来ましたし、
トイレも何とか自分で出来ました。
が、あることがありました。
歩行に問題があるので、補装靴の相談に、
リハビリテーションにいったときでした。
入所の施設でも、
自宅でも(入所の施設を利用する前)、
洋式トイレにおしり洗浄がついてなかったのか、
s-k君は自分でトイレに行きましたが、
「ワ~」という大きな声がして、
トイレに行ってみると、
おしり洗浄を作動するボタンを
押してしまったのでしょう。
少ししか便座に腰かけていなかった
s-k君のお尻の後ろから、
勢いよく、
おしり洗浄の温水が、
吹き出ているではありませんか。
そして上向きに飛び出した温水は、
便座に座っているs-k君に、
降りかかっていました。
まるでシャワーを浴びているようでした。
驚いた施設のスタッフと、
筆者はs-k君に近づきましたが、
私たちも温水を浴びていました。
何とか、おしり洗浄のスイッチを
止めることが出来ました。
あとは濡れたまま、
施設への帰路に立ちました。
冬で衣類が濡れたままで、
s-k君も私たちも、
大変寒かった思いをしました。
そんなs-k君は、
飲み込み間違いの病気、
誤嚥性肺炎を何度も発病しました。
入院を何度かしました。
入院中も、
看護師さんたちにはお世話になりました。
安静にしていてほしいのですが、
それが理解できるはずなのですが、
病室を抜け出して、
スタッフルームに行ったり、
ポータブルトイレを使おうとしないで、
普通のトイレに、
歩いて行ったりしてしまうのです。
安静が必要なのに、
看護師さんも、何度も何度も
説明をしてくださっているのですが、
何せおしり洗浄の事件のように、
なんでも自分でやってみたい人ですから、
周りの人の意見に耳を貸そうとはしませんでした。
誤嚥性の肺炎も、
最初は意外と
短期間の入院で軽快していたのですが、
何度も繰り返すうちに、
難治性の誤嚥性肺炎に
なっていきました。
炎症が取れず、
呼吸も大変になってくると、
動きたくても動けなくなりました。
歩行に困難があり、
手足の奇形があり、
器用性にかけるs-k君でしたが、
「自分でやる!」「自分でやる!」と
命尽きるまで思っていたでしょう。
筆者はそう思います。
もっといろんな体験をしたかったでしょう。
もっと知らないことを知りたかったでしょう。
天国で、
いっぱいいろんなことやってみてくださいねと、
筆者は祈ることしかできませんでした。
筆者 桔梗