20看護師が見た「s-1 君のエピソード」

s-1君の特徴

     40歳以上の男性 言葉でのコミュニケーションはできません。

    ごみを見ると拾って食べてしまいます。

s-1君のエピソード

s-1君は、どんな所のごみも拾いたがります。

しかし、車社会の現代、

道路へ飛び出すs-1君を、

男子のスタッフが引き留めるのに

力いっぱいで引き留めなければなりません。

s-1君は、

いつもごみが落ちていないか、

気を張っています。

ごみを見ると、勢いよく走り出すのです。

ゆっくりや、ノンビリという言葉は、彼にはないようでした。

散歩や歩行など、

施設の外へ外出するのが大変です。

そんな生活をしているうちに

s-1君は巨大結腸症という病気になりました。

腹部が、大きな車のタイヤが入っているみたいに、

膨れ上がってしまいました。

おなかが苦しいのでしょう。

食事の時間になると、

s-1君はせき込みながら、

食事を詰め込んで、

無理やり飲み込んでいました。

s-1君のおなかは、ポンポンに膨らみました。

とうとう食事が出来ない、

即ち、「食事はいらない」とジェスチャー

表現しました。

病院へ受診しました。

しかし、診断はしていただいたのです。

が、しかし、人工肛門のような、

治療はできないということで、

施設に帰りました。

病院の待合室や、

検査を何とか終わり、

s-1君はほっとしたのでしょう。

施設に戻ってからは、

おなかを温めたり、冷やしたりして、

排ガスを促したりすることに

s-1君は素直に順応していました。

少し排ガスがありました。

食事の時間になり、

食べることが出来るようで、

s-1君は、

食事を全部食べることが出来ました。

少しは、排ガスで、おなかが楽になり、

食べることが出来たのでしょう。

しかし、それが最後の食事でした。

食事を終えて、間もなく、心停止です。

横隔膜を腹部が押し上げ、タンポナーゼを起こしたのでしょう。

人工呼吸をして、救急車で運ばれました。

同じ病院でした。

ドクターも、

救急の医師と、外来の医師は異なっており、

一度は受診した後、

再度、

心停止で運ばれるのは、

異例の事だったのでしょう。

「なぜ、もっと早く受診しなかったのか?」

と救急の医師は言いました。

一般の人は思うでしょう。

こんな知的障害の人は、

高度な医療(人口肛門増設術)など、

できない。

きっとできないであろうと。

しかし、

s-1君はきっと思ったでしょう。

僕は、へたかもしれないし、

間違ったことをして、

失敗もするかもしれません。

でも何度も、

教えてください。

最初から、出来ないと、諦めないでください。

さじを投げないでください。

僕も一人の人間です。

と言いたかったでしょう。

筆者 桔梗